愛甲･伊勢原市の温泉･鉱泉

この地域における温泉の特色

丹沢周辺にゆう出する温泉の特色

　丹沢周辺の温泉は､別所(煤ヶ谷)･飯山･七沢･伊勢原･中川などにゆう出する温泉と鶴巻･湯の沢

にゆう出する温泉とに大別できる。これらのうち、別所(煤ヶ谷)･飯山･七沢･伊勢原･中川などに

ゆう出する温泉(鉱泉)はｐＨが９.４～１０.５と高く、微かな硫化水素臭を伴うほか溶存成分の

低いことが特徴でこれらの大半が珪酸を多く含有する傾向をもっている。これらの地域にゆう出

する温泉のほとんどはアルカリ性で泉温２５℃以上の七沢温泉と中川温泉が療養泉規定を満たし

た単純温泉であるほかは療養泉規定に該当しないメタ珪酸含有の温泉が主である。また、鉱水の

特徴がこの地域の温泉とほとんど分別できないにもかかわらず、温泉法の規定に満たない鉱泉も

多くみられる。

　愛川温泉は、愛川町内にゆう出する温泉を総称するが、現在まで温泉の開発はなく、書籍等に

見られる昔から｢鉱泉｣として利用されているものがいくつか存在し､それらは馬渡の｢塩川鉱泉｣､

真名倉の｢半原鉱泉｣、中津峡の｢石小屋鉱泉｣などがある。これらは、丹沢地区にゆう出する他の

鉱泉と同じ特徴を有しているものの、温泉法の規定を満たすものはない。なお、宮ヶ瀬ダム建設

に伴って中津峡の石小屋鉱泉は既に存在しない。

　煤ヶ谷温泉は、西ヶ谷戸地区で昭和４２年に開発されたメタ珪酸含有の温泉で、丹沢周辺にゆ

う出する温泉(鉱泉)と同じ特徴を有している。この源泉は、厚木２号泉として登録され昭和５０

年代まで宿泊施設に利用されたが、現在は未利用となっている。昭和４５年には別所地区の源泉

も鉱泉の分析試験を経て台帳登録され、｢別所温泉｣として今も宿泊施設に利用されている。昭和

４４年に発見された宮ヶ瀬の源泉は、総硫黄２mg及び重炭酸そうだ３４０mg以上で温泉法の規定

を満たしたが、現在は台帳になく不明である。なお、法論堂にゆう出する鉱泉は未分析である。

　七沢温泉は、傷ついた蛇が入浴するのを見て発見されたと伝えられる古い温泉で、昭和４１年

の七沢病院で掘削された源泉が鉱泉分析試験を経て｢厚木１号泉｣として台帳登録されたのを機に

新たな井戸の掘削と登録が行われた。それまでは温泉法の規定を満たしたものはなく、｢鉱泉｣と

して利用されてきた。現在は、｢かぶと湯｣を含めて６源泉が登録されている。平成４年に開発さ

れた｢七沢荘｣の源泉は６００ｍ掘削して、東丹沢で初の泉温による｢温泉｣のゆう出に成功した。

　飯山温泉は、｢元湯｣と｢大和屋｣が古くから存在し、以後営業を始めたいくつかの旅館を含めて

丹沢周辺にゆう出する温泉･鉱泉と同じ特徴を有しているものの、温泉法の規定を満たさない｢鉱

泉｣を長らく利用してきた。昭和５４年､｢ふるさとの宿｣が２５０ｍの井戸を掘削し、鉱泉分析試

験の結果、メタ硼酸が温泉法の規定を満たした。この源泉はさらに１００ｍ増掘し、再度鉱泉分

析試験を経て｢厚木８号泉｣として台帳登録された。平成１５年には｢元湯｣でも新たに温泉の開発

を行い、ｐＨ１１.３という我が国でも第２位の強アルカリ泉のゆう出に成功した。

　厚木温泉は、平成１５年に林地区で開発された大深度掘削によるもので、薄い緑色を帯びた泉

温２７.５℃の単純温泉で､公衆浴場に利用されている。平成１７年２月には酒井地区でも新たに

地下１,５７５ｍから泉温約３８℃の温泉がゆう出したが､この源泉の利用は未定である。

　伊勢原温泉は、西富岡及び上粕屋にゆう出するものと大山地区にゆう出するものに大別され、

昭和３３年と３６年に開発された西富岡及び上粕屋にゆう出する温泉は、ｐＨが高く溶存成分の

低いことが特徴で、珪酸を多く含有する傾向をもっている。平成４年、産能大学近くの飲食店が

地下水を得るための井戸を掘削中、地温勾配を分析しつつ温泉の開発に変更した。この源泉は、

８０５ｍまで掘削され､２６.１℃のアルカリ性単純温泉がゆう出した。大山地区では、平成８年

度に伊勢原市が温泉掘さく探査を行い、この動向を踏まえて市とは別に個人が平成１０年１０月

から温泉の掘削を行い､翌年地下１,０００ｍから従来の市内にゆう出する温泉とは泉質が異なる

芒硝を含む塩化土類泉がゆう出した。また、伊勢原市は平成１０年１０月末から温泉の掘さくを

進め､平成１２年３月に地下１,８００ｍから同様の塩化土類泉がゆう出した。この源泉を用いた

公衆浴場の建設が計画されているものの、現在においても未だ具体化していない。なお、日向地

区にゆう出する源泉は定量分析の結果、メタ珪酸が温泉法の規定を満たしたが、台帳には登録さ

れていない。