秦野･足柄の温泉･鉱泉

この地域における温泉の特色

秦野･足柄にゆう出する温泉の特色

　この地域にゆう出する温泉は、七沢にゆう出する温泉(鉱泉)のようにｐＨが高く溶存成分の少

ないアルカリ性の単純温泉若しくはそれらと成分組成が類似している療養泉規定に満たないメタ

珪酸含有の温泉のほか、鶴巻と湯の沢にゆう出する化石海水型の温泉が存在する。鶴巻と湯の沢

にゆう出する温泉は、化石海水型の温泉で塩化カルシウムを多く含有するものの、川崎や横浜に

多く点在する有機物を含む温泉とは異なり、ほとんど無色透明で重炭酸イオンの含有率が低い特

徴を有している。鶴巻温泉は源泉相互の干渉が激しく､昭和４２年に県の温泉審議会(現在の自然

環境保全審議会温泉部会)の答申に基づいて策定された｢神奈川県温泉保護対策要綱｣によって､温

泉準保護地域に指定されたことにより、既存源泉から半径１５０ｍ以内の新たな源泉の掘削が認

められなくなったため、枯渇や埋没などで源泉の数は減り、休止の６源泉を除いて現在３源泉が

利用されている。湯の沢温泉は、昭和４５年に開発された松田町寄(やどりき)の湯の沢団地内に

ゆう出する泉温24.3℃(掘削当時)の温泉で、泉質は鶴巻温泉と類似しているものの、硫酸イオン

を多く含有することが異なる。現在は休止源泉となっている。

　鶴巻温泉は、現在３源泉が利用されており、秦野１７号泉(ゆたか)の泉温が約３７℃であるほ

かは概ね２０～２６℃である。秦野１号泉は公衆浴場に、秦野１２号泉は宿泊施設に利用されて

おり、他の秦野２号･１１号･１３号･１６号泉は現在利用されておらず、休止源泉となっている｡

　秦野温泉は、南矢名地区に掘削･開発された地下１,００１ｍからゆう出する鶴巻温泉に類似し

たカルシウムの多い泉温35.8℃の塩化物泉である。秦野２１号泉として台帳登録され、公衆浴場

に利用されている。

　大井温泉は、平成１４年に開発された山田字土橋にゆう出する泉温16.5℃の療養泉規定に満た

ないメタ珪酸含有の温泉で、雇用･能力開発機構の有する宿泊施設に利用されている。

　松田温泉は、昭和４５年に開発された別名｢湯の沢温泉｣と呼ばれる温泉で、寄(やどりき)地区

の湯の沢団地内にゆう出する泉温23.3℃のカルシウム･ナトリウム－塩化物･硫酸塩泉で、若干の

鉄分を有し、泉質は鶴巻温泉と類似しているものの、硫酸イオンを多く含有することが異なる｡

温泉は松田町と秦野市にまたがる団地地区において分湯の契約住宅にのみ供給利用されていたが

現在は諸般の事情により休止源泉となっている。

　南足柄温泉は、箱根明神ヶ岳の山頂に近い南足柄市塚原で昭和４２年に掘削され、深度６７０

ｍからゆう出する泉温11.8℃の療養泉規定に満たないメタ珪酸含有の温泉である。足柄上８号泉

として台帳に登録されたが、現在まで未利用である。市ではかねてから｢金太郎の湯｣として地蔵

堂地区での温泉開発について検討してきたが、平成１９年広町の｢どんぐりの家跡地｣で外郭団体

による温泉の掘削･開発を行い、地下１,５００ｍから29.5℃の単純硫黄泉がゆう出した。この源

泉は同地に設けられた公衆浴場に利用されている。

　都夫良野温泉は、山北町川西で掘削･開発された地下１,５１０ｍからゆう出する泉温36.8℃の

アルカリ性単純温泉で、大野山中腹に設けられる計画となっている簡易保険グリーン総合レクセ

ンターに利用される予定であったが、計画が凍結されたため、今後の活用策について県と町で協

議中である。

　中川温泉は、古くから３源泉があり、これらは泉温が26.6℃～32.9℃でｐＨが高く、七沢地区

や伊勢原地区などにゆう出する温泉と成分の組成が類似している。昭和３８年に県が中川温泉の

地温勾配を究明するため試掘調査を開始し、これを見ていた地元の人が昭和３９年に新規掘削の

申請をして翌年２月に地下３２０ｍから泉温39.6℃でpH10.3のアルカリ性単純温泉がゆう出した

(足柄上４号泉)。中川温泉は現在６源泉があり、県の温泉保護地域に指定されているため、新た

な掘さくはできない。

　西丹沢温泉は、中川字枡小屋で昭和５０年に開発され、定量分析の結果、メタ珪酸が温泉法の

規定を満たしたが､台帳には登録されていない。